表参道のGYREにて、昨年ターナー賞を受賞したロンドンを拠点に活動する建築家集団Assemble(アセンブル)の展覧会「アセンブル_共同体の幻想と未来」展が12月9日より開催されている。2010年に15人のメンバーによって結成されたアセンブルは、アートやデザイン、建築といったジャンルを超えた市民的公共性に根差した、アクチュアルな社会的活動を行う建築家集団で、世界的に注目を集めている。
本展はアセンブルの日本初の個展であり、地域コミュニティ主導のプロジェクトを立ち上げていく彼らの活動が網羅的に紹介されるとともに、その細やかなルールづくりや住民と協働によるワークショップなどの様子が、様々な手法を用いて展示されている。会場構成を手掛けたのは、RFA(藤村龍至氏)で、その簡潔でわかりやすい構成も必見である。
入ってすぐに展示してあるプロジェクトの「Granby Four Streets」は、1900年代の建築が空き家となった地域で、住民主導での地域再生を図る計画である。この地域は、治安の悪化から住人たちが街を離れ、空き家は放置されたままとなり、次第に人口も減っていった。しかし、アセンブルは、そこにまだ残っていた少数の住民コミュニティに着目し、大きく新たなマスタープランを描く従来の建築家のような振る舞いはせずに現在残っている建物の改修、共有スペースの導入、新しい雇用の確保、自営業者の支援などを盛り込んだ小さな介入によって、段階的に開発を進めていく手法に取組んだ。
– クリップや仮説的な展示代など簡易な素材で作られている展示
ケアンズ・ストリートの10棟のリノベーションでは、伝統的なイギリスのタウンハウスの特徴である大きな窓と高い天井高を生かしながら、二層吹き抜けのスペースにしたり、周辺の瓦礫をコンクリートと混ぜて暖炉に使用したり、タイルやセラミック製のドアハンドルを設置したりと、あらゆる部分でハンドメイドして改装を行う。
– ポップなドローイングも彼らの特徴でもある
次にgallery-Bでは、「グランビー・ワークショップ」というアセンブルが設立した工房が紹介されている。この工房は、クラフトに興味のある地元の住民を雇い、作り方の手ほどきを与え、完成した商品をネット販売する施設で、その収益は、グランビーの地域再生活動に還元するシステムだ。
– 実際の商品や道具もディスプレイされている
gallery-Cでは、「ウィンター・ガーデン」というプロジェクトが展示されている。レンガの外壁だけが残る二階建ての廃屋二戸を、草木などの緑が生い茂るインナーガーデンとアーティスト・イン・レジデンスを併設する集会場にリノベーションするプロジェクトである。
– インナーガーデンが外部的であるようにこのギャラリーCで表参道の外部とつながる
オックスフォードやケンブリッジの出身者が中心だというアセンブルは、15人全てが建築畑出身というわけではない。だからこそのしがらみの無さや柔軟性から今回展示されているようなプロジェクトが成り立つ。それは、チーム名の「ASSEMBLE」からもわかるようにつまり「組み立てる」ことなのである。名詞としての出来高ではなく、動詞としてのシステムやプロセスが重要なのだ。さらに言えば、15人というフラットなチームは、ユニットとしての署名性の放棄ではなく、現在のメンバーが集結し、組み立てられていること自体に彼らのプロジェクトの一端を見ることができるのだろう。
『アセンブル_共同体の幻想と未来』展
会期:2016年12月9日(金)~ 2017年2月12日(日)
開館時間:11:00〜20:00
会場:EYE OF GYRE 3F [渋谷区神宮前5-10-1]
入場:無料
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1-1Architects 神谷勇机 1-1 Architects(イチノイチ アーキテクツ)は、神谷勇机と石川翔一による愛知県刈谷市の一級建築士事務所です。東海地区を中心に国内外を問わず、住宅設計や店舗設計、 リノベーションなど幅広いデザイン業務を行っております。 →STUDIOUNBUILTプロフィールページ |