建築のプレゼンテーションにおいて、CGや手描きのパースが常套手段ですが、シチュエーションにより求められるものは異なります。
例えば、コンペであれば数十、数百ある応募作品の中から自分の作品を審査員に見てもらえる時間はほんの数秒です。その一瞬で「続きを読みたい」と思わせる必要がありますし、さらに言えば、文章を読ませることなくこちらの意図を伝えられるくらいに単純で惹きつけるものが必要となります。
また、素人の施主へのプレゼンテーションには、これでもかというくらいの分かりやすさが求められます。小さなシーンをブツ切りに並べても、それらを頭の中で組み合わせて全体を想像できる人はごく稀です。
この場合には、部分的なシーンに加えて全体を包括するイメージ図が必要となるでしょう。
一枚で伝えたいことを全て伝える
では、どのようなプレゼンテーションがをすれば、即座に相手へイメージを伝えることができるのでしょうか。
私は上記のようなシチュエーションでプレゼンテーションを作成する際は、一枚でその建築の全てを語ることができるイラスト・CGを作成するようにしています。
建物のどこの断面を見せればよいか、何枚も下書きを作成して検討します。
パースの描き方については、本やインターネットで調べれば、様々な透視図の描き方などが紹介されていますが、これらに忠実になりすぎるのも良くありません。
均整のとれたパースはそれはそれで魅力的ですが、隙がなく退屈な上、妙な違和感を覚えることがあります。私たち人間の目は、世界をそのようには捉えていないはずです。
微妙な歪みをつくることで、見る人がパースに入り込む小さな隙が生まれ、親しみのわくプレゼンテーションになるのだと思います。
有名絵本に学ぶ表現方法
「世界の建物たんけん図鑑」集文社
パオロ・ドナティ (著), フィリップ・ウィルキンソン (編集)
ここで、プレゼンテーション作成にきっと役立つ、筆者が大きな影響を受けた本を紹介したいと思います。1993年に集文社から発売された『世界の建物たんけん図鑑』という本があります。
建築家でありイラストレーターでもあるパオロ・ドナティ氏が描く建物のイラストに、フィリップ・ウィルキンソン氏が説明文を加えた、子供から大人まで楽しめる本です。
本の中には世界中の有名建築の断面パースが見開きで大きく、予想もつかない切り口で描かれており、読者はたった一枚のイラストからその建築の情報を余すことなく読み取ることができます。
計算されたアングルと切り口、そしてパオロ氏の画力が成せるスゴ技のイラストを片手に、プレゼンテーションへの想像をめぐらせてみてはいかがでしょうか。
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1-1Architects 石川翔一 1-1 Architects(イチノイチ アーキテクツ)は、神谷勇机と石川翔一による愛知県刈谷市の一級建築士事務所です。東海地区を中心に国内外を問わず、住宅設計や店舗設計、 リノベーションなど幅広いデザイン業務を行っております。 →STUDIOUNBUILTプロフィールページ |